安全保障避ける学術会議 冷戦期に孕んだ時代認識の欠陥の残滓だ 東京大学客員教授・米本昌平(産経:正論)


≪冷戦の過酷さとは無縁だった国≫
 3月24日に日本学術会議は「軍事的安全保障研究に関する声明」をまとめ、軍事目的での科学研究を行わないという半世紀前の方針を再確認した。その直接の動機は、一昨年から防衛装備庁が「安全保障技術研究推進制度」を発足させたため、これに対する態度表明を迫られたからである。
 どんな国であれ大学が防衛省関係から研究費助成を受ければ、軍事機密や達成目標などで条件をのまなければならず、大学側は当然これに対する原則を明確にする必要が出てくる。だが、声明や学術会議報告「軍事的安全保障研究について」を読んでみると、日本のアカデミズムは安全保障の議論をするのに恐ろしく逃げ腰である。
 その理由の一つに、日本が20世紀後半の世界を決定づけた冷戦の過酷さを体感しないまま21世紀に抜け出た、唯一の先進国であることがある。冷戦とは米ソ両陣営が最悪時には7万発の核弾頭を備え、国内総生産(GDP)の5~10%を国防費に割いて核戦争の恐怖に耐えた時代であった。
 この未曽有の恐怖の時代を通して日本は「冷戦不感症」国家であったため、科学技術と軍事の関係を冷静かつ客観的には語りえない欠陥をもつようになった。この点について軍民両用(デュアルユース)技術を軸に論じておきたい。

≪表層的な日本の軍民併用技術論≫
 最も基本的なことは、米国の科学技術は1940年を境に一変してしまったことである。第二次大戦以前の米国では、大学は東部の法文系が主流だった。ところが40年に国家防衛研究委員会が置かれ、戦争中にこの委員会が通信技術、レーダー、航空機、核兵器などの戦時研究を組織し、理工系大学がその一部を受託して力を蓄えた。戦後間もなく冷戦が始まったため、米国は41年の真珠湾攻撃から91年のソ連崩壊まで50年戦争を戦ったことになる。
 そんな中、57年10月にソ連が人類初の人工衛星スプートニク1号を打ち上げた。米国は衝撃を受け、高度な科学技術研究を維持することが安全保障に直結すると確信し、翌年に国防高等研究計画局や航空宇宙局を新設する一方、理工系大学の大幅な拡張を促した。
 国防総省からの大規模な研究委託によって、マサチューセッツ工科大学(MIT)やスタンフォード大学などは急速に力をつけ、「研究大学」という特別の地位を獲得した。60年代末に大学紛争が起こると、軍からの委託研究は批判にさらされ、キャンパスの外に移されたが、これがベンチャー企業の先行形態となった。結局、冷戦の最大の受益者の一つは米国の理工系大学であった。
冷戦後、米国の科学史の研究者は精力的に冷戦研究を行い、この時代の米国の科学技術は、核兵器の開発・小型化・配備体制の開発を最大のミッションとする「核兵器研究複合体」を形成していたと自己診断を下した。日本の議論は、この米国における科学技術史の研究成果を咀嚼(そしゃく)していない。
 90年代の米国は、科学技術を軍事から民生へ転換する「軍民転換」政策を採用した。この時、冷戦時代に開発されたコンピューター技術、インターネット、衛星利用測位システム(GPS)などが民間に開放され、巨大な情報産業が誕生した。この政策を正当化したのが「軍民併用技術」という概念であった。これと比べ、日本の軍民併用技術論は何と表層的でひ弱なものなのであろう。

≪米科学技術史の成果を踏まえよ≫
 かつて核戦争の危機は2度あったが、2度とも日本は重度の「冷戦不感症」を呈した。62年のキューバ危機に際し、ケネディ大統領は事態を説明するためフランス、西ドイツ、カナダに特使を派遣したが、池田勇人首相には親書で済ませた。核戦争が起こるとすれば大西洋を挟んだ撃ち合いになると考えられたからだ。この時、日本は親書の意味が読み取れないまま経済政策に邁進(まいしん)したのである。
 83年欧州のミサイル危機の時には、相互確証破壊を前提とする戦略核ミサイル体制は両陣営で完成していたから、核戦争になれば日本は全滅してしまうはずだった。だがこの時、日本で議論されたのは欧州の反核運動であった。
 冷戦時代、日本が核戦争の脅威を認知しようとしなかった理由はほぼ3つに集約される。第1に日本における核兵器の議論はヒロシマ・ナガサキで凍結されてしまい、その後に本格化する核兵器の大量配備の現実を視野に入れようとしなかったこと。第2に核戦争になれば全てが破壊されてしまうという虚無感。第3に東アジアには東西対決の緩衝地帯として中国共産党政権が存在し、日本がソ連との直接的な軍事対決にさらされることが少なかったことである。
 大学の研究と軍事研究との間に線引きが必要になった事態をもって右翼化と言ったり、戦前の日本と重ねる論法は、冷戦期に日本社会が孕(はら)んだ時代認識の欠陥の残滓(ざんし)でしかない。いやしくも日本学術会議である以上、最低限、米国の科学技術史の研究成果を踏まえた論を展開すべきだったのである。(東京大学客員教授・米本昌平 よねもとしょうへい)
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統幕長の感想に「軽率」 朝日よ、何でもかんでも安倍政権批判に結びつけたくて仕方がないのか 5月27日(産経抄)


 ちゃんちゃらおかしい。自衛隊トップの河野克俊統合幕僚長が23日、安倍晋三首相の憲法9条に自衛隊を明記する提案について、「ありがたい」と述べたことが法に触れるとして、野党や一部メディアが騒いでいる件である。河野氏は、「一自衛官として申し上げるなら」とわざわざ断ってから個人的な感想を語ったにすぎない。
 ▼「憲法という非常に高度な政治的問題なので、統幕長として申し上げるのは適当ではない」。河野氏はこうも前置きしていた。自衛隊法が、政治的行為を制限していることを踏まえた穏当な表明を心掛けたのだろう。
 ▼当然、菅義偉官房長官は24日の記者会見で「個人の見解で、全く問題ない」との認識を示した。にもかかわらず、25日付の朝日新聞社説は「軽率すぎる」「軽はずみ」などと批判し、こう強調した。「河野氏は頻繁に(安倍晋三)首相と会い、軍事的な助言をする立場だ」。
 ▼さらに26日付紙面では「統幕長発言 野党が批判」との見出しで大きく取り上げ、軍事ジャーナリストの「『安倍一強』体制だから不問にふされたと言える」とのコメントを掲載した。親が憎けりゃ子も憎いというが、何でもかんでも安倍政権批判に結びつけたくて仕方がないのか。
 ▼25日の衆院憲法審査会では、自民党の中谷元・前防衛相が「自衛官も国民で、言論の自由はある」と訴えた。一方、共産党の大平喜信氏は、公務員らの憲法尊重擁護の義務を定めた憲法99条違反だと主張した。
 ▼そもそも自衛隊を違憲と位置づける共産党が、自衛官の発言を憲法違反と言っても何を今さらであり、さておく。言葉狩り好きの朝日は、表現の自由を本当のところどの程度大切だと考えているのか。ずっと抱えてきた疑問が晴れない。
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テロ準備罪法案:我が国の「自衛」手段だ(朝雲:時の焦点)


戦後を代表する知識人の一人、清水幾太郎は、「治安維持法」を肯定していた。
 1925年制定の同法は、改正と拡大適用を重ねて強引な捜査を呼び、何万人も検挙されたことで悪名高い。だが本来、「国体ヲ変革シ又ハ私有財産制度ヲ否認」する組織活動の禁止が目的だった。つまり、ソ連の意を受けて天皇制打破、資本主義破壊といった、世間の理解を到底得られない暴挙を目論む共産党への警戒が、背景にあった。
 治安維持法には、清水自身も「厭な思い」をしてきたという。それでも、「日本が自衛のために取った手段の一つであると思う」(『戦後を疑う』)と指摘した。一つの見方であろう。
 重大な組織犯罪を計画・準備段階で処罰する組織犯罪処罰法改正案の審議は、参院に舞台が移る。
 マネーロンダリング、密輸、詐欺……。組織犯罪は今や国境をまたいで発生する。にもかかわらず、187の国・地域が加盟する国際組織犯罪防止条約に、日本は参加できていない。そのため、捜査共助、容疑者引き渡しに支障を来している。
 2015年の国連事務総長報告書は、過激派組織「イスラム国」が国際組織犯罪集団と連携し、資金を確保していると明言した。テロとの関連性も強まっている。組織犯罪集団対策は、我が国の安全確保に資する。条約加盟に必要な「テロ等準備罪」を創設する改正案の早期成立を図らねばならない。
 疑問なのは、野党や左派が「一般市民も対象」「1億総監視社会化」「内心の自由の侵害」と、不安を煽ることだ。「的外れで無責任な極論」(ジャーナリスト・櫻井よしこ氏)も目立つ。
 「毒入りカレーで人を殺す計画の際、カレーだけを作ったケースは実行準備行為に当たるのか」との質問があった。犯罪集団の意図を知らずに、カレー作りだけ協力するというのはあり得るのだろうか。
 「音楽教室が著作権料を払わずに楽譜を使って演奏すれば、組織的犯罪集団に当たるのではないか」といった指摘も、非現実的だ。
 おおよそあり得ないケースを無理やりひねりだし、国民の理解を深めるよりも、金田勝年法相の失言を引き出そうと躍起になっているとしか見えない。
 残念ながら、捜査手法がしばし問題になるのは確かだ。捜査当局が、厳正かつ慎重な運用を徹底するのは当然である。
 しかし、改正案は、まっとうに暮らす人々には関係ない。世論調査でも、必要性を理解する冷静な受け止めが少なくない。
 野党・左派は、戦後日本人が築き上げてきた民主主義を信用できないのだろうか。
 仮に、政権が治安維持法をほうふつさせる検挙を強行すればどうなるか。戦前の「特高」のような手駒を有しているわけでもない。よりどころの支持率が急落し、政権は間違いなく吹き飛ぶ。
植田 高直(政治評論家)

日米首脳会談 対「北」圧力に中国を取り込め(読売:社説)


 核ミサイル開発に突き進む北朝鮮に方針転換を迫るには、効果的で厳しい圧力が欠かせない。
 安倍首相がイタリアでトランプ米大統領と会談し、北朝鮮政策について「今は対話ではなく、圧力をかけることが必要だ」との考えで一致した。
 北朝鮮の脅威を抑止するため、日米の防衛体制を向上させる具体的行動を取るとともに、日米安全保障協議委員会(2プラス2)を早期に開くことも確認した。
 北朝鮮は、国連安全保障理事会の再三の非難声明や制裁決議を無視し、新型の弾道ミサイルなどの発射を繰り返している。
 米国に到達し、核兵器が搭載可能な長距離ミサイルの開発・保有が、自国の生き残りを図る唯一の道だと妄信しているのだろう。
 北朝鮮に核ミサイル開発を放棄させるには、いずれは対話を行い、外交的な解決を追求する必要がある。だが、仮に現段階で対話を始めても、成果は望めまい。
 外交、軍事両面で厳格な制裁や圧力を加えることで初めて、金正恩政権が方針転換に応じる余地が生まれるのではないか。
 安倍首相とトランプ氏は、北朝鮮に対する圧力について「中国の役割が重要だ」との認識を改めて共有した。日米両国が韓国と連携する重要性でも合意した。
 日米韓3か国などの圧力には限界がある。北朝鮮の貿易の9割を占める中国の関与が不可欠だ。
 米軍の空母派遣などの圧力は、北朝鮮だけでなく、軍事紛争を避けたい中国にも向けられていた。中国は石炭輸入は停止したが、本格的な制裁は避け続けている。
 原油の供給制限など、北朝鮮への影響が大きい措置を中国に真剣に促すことが今後のカギだ。
 米軍は7か月ぶりに、南シナ海の中国の人工島周辺で駆逐艦を航行させたとされる。北朝鮮問題で中国の協力を引き出すための揺さぶりとの見方がある。
 日米両国は、北朝鮮と取引のある中国などの企業や金融機関を対象とする「二次的制裁」も検討している。様々な手段を駆使し、厳しい制裁に慎重な中国の歩み寄りを実現することが求められる。
 今回の会談は、国際会議のたびに必ず会談するという2月の首脳会談の合意に基づくものだ。首相とトランプ氏は、北朝鮮問題などで6回も電話会談しており、2人の信頼は着実に深まっている。
 首脳の良好な関係を土台に、日米の閣僚や官僚が緊密な意見交換を重ね、両国の外交政策を的確に調整することが大切である。

南スーダンPKO 陸上自衛隊きょう撤収完了(NHK)


国連のPKO=平和維持活動のためアフリカの南スーダンに派遣されていた陸上自衛隊の部隊のうち、最後まで残っていたおよそ40人の隊員が、27日帰国し、撤収が完了する予定です。これでおよそ5年半にわたる派遣が終了することになります。

南スーダンに派遣されていた陸上自衛隊の施設部隊は先月から撤収を進めていて、日本時間の25日に現地を出発した最後の隊員およそ40人が27日、日本に到着し、撤収が完了する予定です。
2012年1月からおよそ5年半にわたった活動では、延べ3854人の隊員が派遣されて道路や公共施設などのインフラの整備にあたり、整備した道路の距離は250キロに及ぶなど国づくりに貢献しました。
一方で、自衛隊が拠点を置いた首都・ジュバで去年7月、政府軍と反政府勢力による大規模な武力衝突が起きるなど各地で戦闘が相次ぎ、治安情勢が焦点となる中での活動となりました。
こうした中、去年12月には安全保障関連法に基づき武器の使用範囲を広げる「駆け付け警護」の任務が部隊に付与されましたが、実施されることはありませんでした。
また、ことしに入って、部隊の日々の活動を記した「日報」をめぐる問題が発覚し、実際には保管されていながら防衛省が破棄したと説明した経緯などを調べる異例の特別防衛監察が行われています。
政府は部隊の撤収にあたり、今後の国際貢献について、「積極的平和主義の旗のもと、一層貢献していく」としていて、今後に向けて今回の派遣をどう検証していくかが課題になります。

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