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李王殿下と日韓関係の「盲点」 東京大学名誉教授・平川祐弘(産経:正論)


 新天皇の令和の御代(みよ)となった。めでたい。万世一系の天子をいただく国に生まれてよかったと多くの人が参賀に集まった。個人の命は有限だが、百二十六代の天皇家は、古風にいえば天壌無窮(てんじょうむきゅう)、日本国民の永生の象徴として天地とともに窮(きわ)まりない。

 ≪「和ヲ以テ貴シト為ス」≫
 私たちは家族として先祖を敬い、国民として天照大神(あまてらすおおみかみ)を祖神とする天皇家を尊ぶ。国のために死んだ者は陛下の祈りにより慰霊される。死者と生者は、陛下の祈りにより結ばれる。そんな日本の過去と現在の統合の象徴だからこそ陛下には、権力はないが、権威が有る。人の姿で現れるが、人の上(かみ)なる存在である。四月三十日は大みそか、五月一日は元旦の気分だった。新しい御代が明け、新年を寿(ことほ)ぎお神酒(みき)をいただいた。代替わりには宗教気分がただよう。
 大陸から仏教が伝わったとき、固有の宗教文化を護持する勢力と大陸文化の受容を進める勢力が争ったが、聖徳太子は憲法第一条で「和ヲ以テ貴シト為ス」を国是とされた。今日の言葉でいえば神仏共存の宗教的寛容である。一神教徒は妙に思うらしいが、私たちの家にはそれで神棚も仏壇もある。令和の和もharmonyの意味という。天皇家はわが国の神道の大祭司のお家柄だが、他の宗教文化も、それが神道との共存を認める限り、受け入れてきた。そんなお国柄である。次の憲法には、舶来の翻訳調でなく「和ヲ以テ貴シト為ス」を前文に掲げたい。皇室典範には祭祀(さいし)のお勤めも成文化し、皇族数を増やし、男系天子の続くことを祈りたい。
 元号の漢字が『万葉集』と聞いて多くの人が喜んだ。結構だが、それは隣国が鬱陶(うっとう)しい。そんな国民感情の裏返しではないか。それで令和の出典が国書にあると喜ぶようだ。しかし漢字で良かった、音(おん)の発音も澄んで響く。目にも映えて美しい。レイワとかReiwaとか片仮名やローマ字表記の元号では困る。なるほど中国は漢字を使う地域は自国の版図と目し、台湾併呑(へいどん)を唱えたりする。朝鮮は北も南も漢字を廃した。日本人が漢字を使う限り、中華の人は優越感を抱くだろうが、私は度が過ぎた排他的愛国主義を好まない。

 ≪和諧もharmony≫
 ナショナリストの日本人でも、中華料理も洋食もキムチも食べる。和服も洋服も着る。日本が漢文化や西洋文化に汚染されたと私は考えない。政治的には独立は必要だ。だが文化的には漢字仮名交じりの混交も結構だ。将来、四書五経から元号が選ばれることもあるだろう。
 それよりも問題は、中国の共産党政権が孔孟の教えに背くことだ。胡錦濤政権は和諧(わかい)社会を標榜(ひょうぼう)した。和諧もharmonyだが、理想は口先だけで、農村の貧民と都市の党員富裕層との格差が広がった。孔子は平和主義だが、文化大革命の末期に毛沢東は批林批孔(ひりんひこう)を唱え、吊(つる)し上げられた孔子の子孫は生きた心地もなかった。そんな過去はどこ吹く風と人民中国は孔子学院を世界各地に設けた。教育施設を装う政府御用の宣伝機関らしいから、いつ毛子学院と改名してもおかしくない。さすがに『毛主席語録』は教えるまいが、別の主席の語録を習わせるかもしれない。その習近平主席の「中国の夢」とは覇権国家の夢だ。経済大国中国に、民主化の気配はない。露骨に軍事大国への道を大股で進み出した。見るに見かねて米国が動き出したが、これから東アジアは大変だ。わが国が脅威にさらされる様は日清戦争前にそっくりだ。

 ≪王室の交流と皇室外交≫
 文在寅(ムン・ジェイン)政権の下で日韓関係は悪化の一方だ。善意を悪意で返されてはたまらない。平成年間に天皇がソウル訪問をなさらなくてよかったとつくづく思う。来日する韓国観光客は減らないが、韓国で日本語を習う学生数は減った。それは世界の中の日本の力が減ったからやむを得ない面もあるのだが。
 そんな中で特筆すべきことは、李建志(り・けんじ)関西学院大学教授の『李垠(りぎん)』の伝記が作品社から出始めたことだ。李垠とは五百年続いた李朝の当主で大韓帝国の皇太子。日韓併合で大日本帝国の王公族となり梨本宮方子(まさこ)と結婚した李王殿下のことである。韓国人の著者は明確な鋭い日本語で歴史の実態を語る。今まで光のあたらなかった日韓関係の大切な盲点を細部にわたり照らし出す。頭のよい著者はずばずば言う。たとえば「慰安婦像の各地での設置問題は、韓国内にとどまらず海外にまで出張し、慰安婦問題に関する韓国社会の主張を固定させるために想像を誘導する、すなわち思考停止を要求する行為だといえまいか」。
 そんな指摘に半島および日本国内の左派勢力はどう応じるか。日本人は李王に添い遂げた李方子が、李王の死後も韓国で障害児教育に取り組み、没後、韓国政府から国民勲章第一等を追贈されたことを知っている。『李垠』の伝記は皇室外交がいかなる面をもつものか、その詳細を生き生きと伝える。この重要な歴史書の続刊が待たれる次第だ。(ひらかわ すけひろ)
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Comment

ありがとうございます。

拝啓

平川祐弘先生
ま平川先生のますますのご活躍をおよろこび申し上げます。また、拙著をとりあげてくださり、感激しております。ありがとうございました。以後、続巻する所存ですので、どうかご鞭撻のほどよろしくお願いします。
ではでは、取り急ぎ感謝の書き込みまで。

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