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太平洋全域に目向けた日米同盟 東洋学園大学教授・櫻田淳(産経:正論)


 去る1月19日、日米安保条約は、署名60年の節目を迎えた。この機に日米両国政府が外務・防衛担当閣僚の連名で発出した共同声明では、日米同盟は、「民主主義、人権の尊重、そしてルールに基づく国際秩序といった価値に対する揺るぎないコミットメントに根差した」と指摘され、「地域における安全保障協力などを通じて自由で開かれたインド太平洋という両国が共有するビジョンを実現しつつ、日米両国の平和と安全を確保するに際して不可欠な役割を果たしてきた」と評価される。

 ≪繁栄を保証する不動の柱≫
 ドナルド・J・トランプ米国大統領は、声明を発し、「日米の卓越した指導者たちに祝意を贈る」と述べた。安倍晋三首相は、記念式典での挨拶(あいさつ)で、「不滅の柱。アジアとインド太平洋、世界の平和を守り、繁栄を保証する不動の柱だ」と位置付けた。こうした言葉は、日米両国共通の「価値意識」と「構想」に裏付けられた日米同盟の今日的意義を表示していた。
 日米安保条約改定から遡(さかのぼ)ること10年前、1950年1月、ディーン・G・アチソン(当時、米国国務長官)は、所謂(いわゆる)、「不後退防衛線」演説を行った。
 この演説は、前年の共産主義・中国の成立といった事態を受けて、アリューシャン列島・日本列島・琉球諸島・フィリピン諸島を結ぶ線を米国の安全保障上の「不後退防衛線」として設定したものであり、5カ月後の金日成(当時、北朝鮮首相)による韓国侵攻を誘発したと評価されている。
 金日成は、「不後退防衛線」演説による米国の安全保障関与の範囲には朝鮮半島が含まれないと解したのである。もっとも、現下の関心に照らし合わせて留意すべきは、「不後退防衛線」演説の次の一節であろう。それは「不後退防衛線」を語る前段の記述である。
 「日本の敗北と武装解除は、米国に対しては、日本の軍事防衛を自明のものとして解する必要を課している。それは、米国の安全保障利益、太平洋全域の安全保障利益だけではなく日本の安全保障利益において要請される限りである」。この記述が示唆するように、冷戦初期以来、日本の軍事防衛は、米国の極東政策の中で第一の優先順位を占めてきた。しかも、強調されるべきは、米国による日本の軍事防衛は、日米両国の安全保障利益だけではなく太平洋全域の安全保障利益に結び付くとされていたことにある。
 後の日米安保体制に継がれる米国の安全保障関与の意味を誤解しないためにも、太平洋全域への米国の関心は見落とされるべきではない。現下、日本は、日米同盟の枠組みを通じ太平洋全域への関心をどれだけ払っているだろうか。

 ≪「太平洋島嶼コミュニティー」≫
 折しも、昨年11月の香港区議会議員選挙における「民主派」勢力の圧勝、そして先刻の台湾総統選挙における蔡英文(台湾総統)の再選は、中国共産党体制の圧力を一応ははね返したことによって、太平洋の国際政治環境に多大な影響を及ぼした。
 そもそも、香港も台湾も、香港島や台湾島という太平洋の島々であるという事実に着目すれば、それらは、主に華人が住んでいる空間であるとはいえ、決して「中国の一部」ではなく、むしろ日米豪比各国を含む「太平洋島嶼(とうしょ)コミュニティー」を成していると見るのが適切であろう。
 香港や台湾は、その「太平洋島嶼コミュニティー」の最外周に位置しているのである。また、特に台湾総統選挙の結果は、吉田茂が「世界で最も優秀な民族」と評した華人が民主主義体制を運営すれば、それが「アジアで最も先進的な民主主義体制」として出現することができるという事情を示している。そして、それこそは、大陸・中国と台湾が既に異なる「文明」圏域に属するようになったことの証左である。
 中国共産党政府が執着する「一つの中国」原則は、実質上は幻像(げんぞう)なのである。加えて、此度(このたび)の蔡英文再選に際しては、日米英各国から祝意が表明されたけれども、「民主主義コミュニティー」というものがあるとすれば、香港とも縁の深い「母国」である英国、「世界の守護国」である米国、そして「アジアの最古豪国」である日本が、「アジアの最先端国」である台湾の成功を寿(ことほ)ぐのは、むしろ当然のことである。

 ≪「民主主義コミュニティー」≫
 「太平洋島嶼コミュニティー」と「民主主義コミュニティー」の双方の事情には、明々白々な「局外者」である中国は、容喙(ようかい)できない。そのことが意味するものは重要である。60年の節目を経た日米安保条約の下、日本が手掛けるべきは、日米同盟を「太平洋島嶼コミュニティー」と「民主主義コミュニティー」の双方の支柱として確固としたものにすることだ。
 その意味でも、香港と台湾の「自由」に対する関心は、明確かつ執拗(しつよう)に表され続けなければならない。「不後退防衛線」演説における曖昧な言辞が戦争を誘発したのだとすれば、その轍(てつ)を踏むわけにはいかない。(さくらだ じゅん)
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