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【正論】拓殖大学大学院教授・森本敏 尖閣と普天間はリンクしている(産経N) 

中国漁船が9月7日に、尖閣諸島南端の久場島北西の領海内で巡視船に衝突した事件で、日本当局が船長を公務執行妨害の疑いで逮捕したことに対して、中国側が取ってきた強硬姿勢は、温家宝首相が即時、無条件釈放を求め、さもなければ、さらなる対抗措置を取ると警告する事態にエスカレートした。

 中国側の対応はこれまで、すでに、駐中国日本大使への抗議、日本大使館へのデモやいやがらせ、閣僚級交流やスポーツ・旅行・文化行事の停止、東シナ海ガス田開発交渉中断、全人代副委員長の訪日延期など急速に激しさを増し、全く冷静さを欠いている。

 ◆船長裁判阻止へ圧力かける

 中国側は、日本の司法当局が船長を日本の国内法で起訴して判決を下すと、尖閣諸島は法的に日本領土であるという既成事実ができてしまうので、それを阻止すべく、あらゆるルートから船長釈放を求める圧力をかけつつ日本側の対応を見極めようとしている。習近平国家副主席の陛下表敬の時のように、日本は圧力をかければ最後は何とかなる社会だと考えているのであろう。日本の司法当局には政治圧力が効かないことを理解していないのかもしれない。

 中国の究極の狙いは、周辺海域での海洋主権の拡大に向けて既成事実作りをし、領有権を唱え続けて日本との交渉に持ち込むことにある。だから、今後も尖閣諸島に漁船を近寄らせ、大型漁業監視船(海軍艦艇の改造船)で威圧して恒常的な活動実績を積み上げてゆき、いずれ実効支配という非常手段に出る可能性もある。

 中国は国内の反日デモが拡大しないよう統制する一方、反日感情を利用して日本側に圧力をかけてもいる。

 日米同盟が健全状態になく、日本の内政も安定していないのを見越し、日本が7月の東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)で南シナ海問題に関し中国批判をしたことに報復するという要素もあろう。

 日本としては、日中間に領土問題はないとの原則に立ち、国内法に照らして厳正に対応していくほかない。司法当局は勾留(こうりゅう)期間を延長して起訴する方向で、公判請求はあり得る。政府は中国に冷静な対応を要請し続けており、これまでの対応は妥当なものだ。

 ◆沖縄が対立の最前線に

 日本が今後取るべき対応は、第一に、普天間飛行場問題を速やかに解決し、日米同盟を再強化することだ。在日米軍は対中抑止力の役割をますます色濃く帯びるようになっており、対中戦略のうち喫緊の課題が尖閣諸島問題である。尖閣問題と普天間問題は密接にリンクしているのである。

 仮に、尖閣諸島が中国の領土になれば、沖縄の各基地を含む在日米軍基地は、米中対立の最前線になる。そんな状況を未然に防ぐためには、日米同盟に基づく抑止機能を再活性化するしかない。できれば、早急に沖縄周辺海域で日米海上合同演習を頻繁に行うといった着意が必要である。

 第二は、中国が対日抗議を激化させていることに対しては、あくまで法と正義にのっとって冷静に対応することだ。前述した通り、中国が日本社会には圧力をかければ、自らの意図を実現できると甘く見ているとすれば、なおのこと国内法を厳正に適用する姿勢を明確にする必要がある。

 その一方で、中国が、今回のような海洋行動を一段と日常化させてきて、そのうち、中国海軍艦艇が中国漁船を守りつつ、日本の領海に接近してきた場合、いかなる手段を取るべきかも検討しておかなければならないだろう。

 ◆施設建設と日米合同演習を

 備えのひとつとして、日本としては、現在私有地である尖閣諸島を国有地にする手続きを踏み、船舶の停泊施設や警戒監視施設、対艦ミサイル基地を建設するなど対応に万全を期しておくべきだ。

 また、南西方面戦略を進めて、鹿児島南端から与那国島に至る百九十余の離島を防衛する措置を取ることも急がれる課題だ。

 第三には、尖閣の問題を日中間の問題に狭めることなく、アジア・太平洋の多国間の問題に広げる努力を行うことである。

 10月にはハノイで東アジアサミットが、11月には横浜市でアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議がそれぞれ開催される。これらの会合を通じて、アジア・太平洋における航行の自由や領有権問題について、各国の懸念を背にしたような外交的な働きかけを行う必要がある。中国は日本への対抗措置を、南シナ海問題を抱えるASEAN諸国に見せつけている。そして、ASEAN側は日本の対応を注視しているのだ。

 要するに、今回の問題ではっきりしてきたのは、中国の一方的にして強圧的かつ露骨な海洋主権拡大の意図であり、中国が今回のような海洋行動を常態化させることにより、目的を達成しようとする長いプロセスが始まったということである。日本の姿勢としては、法と正義に基づき正々堂々と振る舞うこと、それ以外にない。(もりもと さとし)
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